相続人の一人と連絡が取れない実家は、残る家族だけで解体契約を進めず、まず相続人の範囲、建物名義、所在調査、代理権限を確認します。 戸籍や住民票等で調査しても所在不明なら、家庭裁判所の不在者財産管理人制度が必要になる場合があります。管理人が選ばれても、遺産分割や財産処分には別の権限外行為許可が必要です。
『何年も連絡がない』『海外にいるらしい』『親族が代わりに同意した』だけで、相続人本人の同意や正式な代理権があるとは扱いません。解体は建物という財産をなくす行為です。見積取得と現場安全確認は進められても、契約、残置物処分、着工の権限は司法書士・弁護士や家庭裁判所の案内で確認します。
見積前に人と建物の関係を表にする
| 確認対象 | 集める資料 | 判断しないこと | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 被相続人 | 出生から死亡までの戸籍 | 家族の記憶だけで相続人確定 | 戸籍窓口・専門家 |
| 行方不明者 | 戸籍附票・返戻郵便等 | 連絡不能だけで死亡扱い | 家庭裁判所 |
| 土地・建物 | 登記事項証明・評価証明 | 固定資産税納付者を単独所有者扱い | 法務局・専門家 |
| 未登記建物 | 名寄帳・家屋資料 | 台帳名義だけで処分権限確定 | 市・専門家 |
| 遺言・協議 | 遺言書・協議書の有無 | 口約束で分割済み扱い | 家庭裁判所・専門家 |
| 解体見積 | 現況・危険・残置物 | 見積依頼を着工承諾扱い | 解体業者へ留保を明記 |
最初に相続が終わっていない実家の確認順を使い、相続人候補を一覧にします。建物が未登記なら、名寄帳と未登記家屋の確認も行います。所在不明者の持分が土地だけか建物にもあるかで、集める資料と相談内容が変わります。
不在者財産管理人が必要か確認する
裁判所は、不在者を『従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者』と説明しています。不在者が財産管理人を置いていない場合、配偶者や相続人などの利害関係人や検察官が選任を申し立てられます。単に返事が遅い人や連絡先をまだ調べていない人を、家族判断で不在者と決めません。
申立先は原則として不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。標準的な添付資料には、不在者の戸籍謄本・戸籍附票、不在の事実を示す資料、不動産登記事項証明書などの財産資料、申立人の利害関係資料が挙げられています。追加資料や予納金が必要になる場合もあります。
管理人選任と解体許可を混同しない
不在者財産管理人は主に財産を管理・保存します。裁判所の案内では、遺産分割や不動産売却など権限を超える行為には家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。名古屋家庭裁判所のQ&Aも、遺産分割や不在者の財産処分には別途許可が必要と説明しています。
建物の取壊しも財産処分に関わります。危険な老朽化があっても、管理人が選ばれたから直ちに契約できると考えず、どの申立てと許可が必要かを個別に確認します。解体会社へは『権限確認中であり、現段階は見積のみ』と書面で伝え、着工日やキャンセル料を確定しません。
危険な空き家は保存措置を分けて相談する
屋根材の落下、倒木、侵入、漏水など直ちに危険がある場合は、全面解体の同意問題と、被害を広げない保存措置を分けます。敷地へ無断で入り応急工事を進めず、現況写真、近隣への影響、行政からの通知、業者の安全所見を記録し、管理人候補や専門家へ伝えます。
電気・ガス・水道の停止、火災保険、郵便物、草木管理、鍵の保管も担当者を決めます。所在不明者の私物を勝手に捨てず、室内写真と残置物一覧を作ります。解体見積は建物本体、家財、庭木、塀、井戸、アスベスト調査を分け、許可後に条件を更新できる形にします。
工程表に裁判所手続の余白を置く
申立てから選任・許可までの期間を解体会社の都合だけで決められません。売却予定、補助金期限、固定資産税の事情があっても、許可前着工を前提に逆算しないでください。見積有効期限、現地再調査、近隣説明、ライフライン、届出は権限確認後に再設定します。
不在者財産管理人の職務は、当初目的の遺産分割が済めば自動的に終わるとは限らないと裁判所は案内しています。管理人の報酬や予納金、財産引継ぎも含め、解体だけの短期代理人と誤解せず、選任申立て前に手引と個別相談で見通しを確認します。
契約前の行動を三つに絞る
契約前は、①戸籍・登記・名寄帳で相続人と建物名義を確認、②所在調査後に管轄家庭裁判所へ不在者手続を相談、③管理人の権限外行為許可を確認するまで着工しない、の3つです。
権限確認が済んだ後は、老朽化、残置物、庭木、アスベスト調査を別項目にした解体見積を作ると、手続待ちの間に現場条件が変わっても比較し直しやすくなります。
確認した一次情報
- 裁判所 不在者財産管理人選任(2026年9月19日確認)
- 名古屋家庭裁判所 不在者財産管理人選任(2026年9月19日確認)
- 名古屋家庭裁判所 遺産分割調停(2026年9月19日確認)
不在者財産管理人・権限外行為許可の要否は個別事情で変わります。2026年9月19日時点の裁判所案内を基に、管轄家庭裁判所、司法書士または弁護士へ確認してください。



